タクシーに乗り込む。
行き先を告げ、タクシーが走り出す。
後ろを見ると、凛がエントランスから出てくるところだった。するとそこに、男が現れ、凛の腕を掴んだ——。
「すみません止めてください!」
タクシーの運転手が慌ててブレーキを踏む。「はぁ?今走り出したばかりなんだけど。」
慌ててタクシーを降りる。
タクシーの運転手が、「ちょっと、あんた乗るの乗らないの。」と困惑して呼び止めたが、答えてる暇はない。
凛は、男に腕を掴まれ、体を強張らせていた。
「触るな!」
凛に駆け寄る。
凛は、凛は昔この通りで通りがかりの男に腕を掴まれ、怖い思いをした過去がある。
その恐怖を再び味わわせることなんて、絶対にしたくない。だから、そんな風に触るな。
「お前、何すんだよっ。」
その男の手を掴み、凛から引き剥がす。
怒りが込み上げてきて胸ぐらにつかみかかる。
凛が、俺の背中に回る。
そのまま殴りそうになったが、凛がいたからやめた。
手をパッと放すと、男はよろめきながら立ち去った。
去り際、俺の顔をみてニヤリ、とした。不気味な奴だな、と思った。



