会社でのお昼休み、一人で社食を食べていると佐久間くんがやってきて目の前に座った。
「なんか久しぶりだな」
トレーには大盛りのカツ丼とうどんが乗っていて、食欲旺盛だなあ、なんて思う。
「佐久間くん忙しそうだったね。少し落ち着いたの?」
「うん。後は結果を待つのみってとこかな。気持ちは全然落ち着かない」
「企画、通ってくれたらいいね」
するとそこに日高さんがやってきて、佐久間くんの隣に座る。
「私もここいいかしら?」
「え?! は、はい、どうぞ」
挙動不審な佐久間くんが答え、なぜが三人でご飯を食べることになった。
と思っていたら、お弁当を持った先輩がやってきた。
「あ、来たわね。松永くんはそこ座って」
「どういう状況なの?」
先輩は不思議そうにしながらも私の隣に座った。
私も、どういう状況なのかわからない。
「私が呼んだのよ。楽しそうだな、と思って」
日高さんはふふ、っと笑う。
楽しそう?!
いったいどうしてだろうと思ったけれど、佐久間くんは同意したように頷いている。
「なんか、ダブルデートみたいですね」
「佐久間くん?!」
ダブルデートって……学生のノリが抜けてないよ?
何言ってるの、と思っていたら日高さんは楽しそうに佐久間くんを見る。
「じゃあ、私とあなたがカップルってことかしら?」
「えっ?! いやそういうわけじゃ……」
焦る様子の佐久間くんだけれど、日高さん、先輩、私を見回してハッとした表情になる。
「え、もしかして二人って……え?! そういうこと?」
私と先輩の関係に気付いたようだった。
「あら、察しの良い子は好きよ」
佐久間くんは驚きを隠せないようだったけれど、日高さんはクスリと笑っていた。
なんだか楽しそう。
さっき言っていた楽しそうの言葉の意味がわかった。
「バラしてごめんなさいね」
「いえ、私は大丈夫です」
先輩は何も言わないけれど、良かっただろうか。
「全然気付かなかった……」
「同じフロアでも私以外気付いている人いないわよ」
「日高さんはなんで気付いたんすか?」
「私も察しがいい方だからね」
「なるほど、さすがです」
なんだか、二人仲良くなってる。
佐久間くんは一方的に知ってる感じだったし、話すのは初めてだよね。
高嶺の存在だなんて言っていたけどものおじしないし、コミュニケーション能力高いな。
そうしている間に私は日替わりランチを食べ終えたので、トレーを片付けようと席を立つ。
「俺も行く」
佐久間くん、あんなにたくさんあったのにもう食べ終わったんだ。
二人で返却棚へ向かいながら、小声で話しかけてくる。
「いつから付き合ってたの?」
「えっと……配属された日から」
「え?! その日に?」
「うん。実は松永先輩は大学のサークルで一緒だったんだよね」
そうだったんだ、とさらに驚いた様子だった。
「付き合ってること知らなくて、俺無神経なこと言ったかも。ごめん」
先輩と日高さんがお似合いだって言ったことかな。
たしかに少し気にしてしまったけど、それは佐久間くんのせいじゃなくて、私が自分に自信がなかったから。
でも、もう大丈夫。
「そんなこと気にしなくていいよ」
「いやー、よくよく考えたら飲み会の帰りにたまたま会って一緒に送ってくれるなんて変だよな。なんで気付かなかったんだろう」
「私も怪しまれるかなって思ったんだけど、佐久間くん酔ってたし、それどころじゃなかったからね」
「なんにせよ、幸村が幸せそうで良かった」
「私、幸せそうにしてる?」
「うん。ちょっと前までは疲れた感じしてたけど、最近は楽しそう」
そんなふうに見えてたんだ。
私って、顔にでやすいのだろうか。
「企画、通ったら一番に幸村に報告するから」
「うん、ありがとう」
「こちらこそ、ありがとな」
食器を返して席に戻ると、ちょうど先輩もお弁当を片付けたところだった。
「戻りましょうか」
「そうだね」
先輩はお弁当を持って席を立つ。
「佐久間くんはもう少し私に付き合ってくれない?」
「えっ、はい、俺で良ければ」
日高さん、なんだか佐久間くんのこと気に入ったみたいだな。
佐久間くんも戸惑ってはいるけど、ちょっと嬉しそう。
私と先輩は二人で食堂を出る。
「さっき佐久間くんとなに話してたの?」
「いつから付き合ってたのかって聞かれて。佐久間くんに言ってもよかったですか?」
「僕はかまわないよ。むしろ言いたかったし」
「え? そうなんですか?」
思えば、元々は私が配属されたその日に付き合い始めたなんて言えないから、秘密にしておきたいってお願いしたんだった。
先輩は、そうじゃなかったのかな。
「まあ、言って回るようなことではないけどね。仲良い人には言ってもいいんじゃない?」
「そうかもしれませんね」
仲良いっていっても、会社ではあとは他の同期二人くらいだけど。
先輩は、報告するような仲の良い人いるのかな。
「幸村さんは、企画開発部に行きたいと思ってるの?」
「いつか、異動できたらいいなとは思います。だけど私、経理部の仕事も好きなんです。会社のお金の流れとか、実態とかがよくわかりますし、いろいろな部署の人たちの関わりも多くて、はじめに配属されたのがここでよかったと思っています。しばらくは、経理部で頑張っていきたいと思ってるんですよ」
「そっか。経理の仕事好きだって言ってもらえて良かった」
「先輩のおかげですよ」
教え方もわかりやすいし、先輩が隣にいると頑張ろうと思える。
いつかもし結婚するなんてことになったら同じ部署にはいられないし、そのときは移動になるんだろうか。
なんて先のことを考えてみたりした。
「なんか久しぶりだな」
トレーには大盛りのカツ丼とうどんが乗っていて、食欲旺盛だなあ、なんて思う。
「佐久間くん忙しそうだったね。少し落ち着いたの?」
「うん。後は結果を待つのみってとこかな。気持ちは全然落ち着かない」
「企画、通ってくれたらいいね」
するとそこに日高さんがやってきて、佐久間くんの隣に座る。
「私もここいいかしら?」
「え?! は、はい、どうぞ」
挙動不審な佐久間くんが答え、なぜが三人でご飯を食べることになった。
と思っていたら、お弁当を持った先輩がやってきた。
「あ、来たわね。松永くんはそこ座って」
「どういう状況なの?」
先輩は不思議そうにしながらも私の隣に座った。
私も、どういう状況なのかわからない。
「私が呼んだのよ。楽しそうだな、と思って」
日高さんはふふ、っと笑う。
楽しそう?!
いったいどうしてだろうと思ったけれど、佐久間くんは同意したように頷いている。
「なんか、ダブルデートみたいですね」
「佐久間くん?!」
ダブルデートって……学生のノリが抜けてないよ?
何言ってるの、と思っていたら日高さんは楽しそうに佐久間くんを見る。
「じゃあ、私とあなたがカップルってことかしら?」
「えっ?! いやそういうわけじゃ……」
焦る様子の佐久間くんだけれど、日高さん、先輩、私を見回してハッとした表情になる。
「え、もしかして二人って……え?! そういうこと?」
私と先輩の関係に気付いたようだった。
「あら、察しの良い子は好きよ」
佐久間くんは驚きを隠せないようだったけれど、日高さんはクスリと笑っていた。
なんだか楽しそう。
さっき言っていた楽しそうの言葉の意味がわかった。
「バラしてごめんなさいね」
「いえ、私は大丈夫です」
先輩は何も言わないけれど、良かっただろうか。
「全然気付かなかった……」
「同じフロアでも私以外気付いている人いないわよ」
「日高さんはなんで気付いたんすか?」
「私も察しがいい方だからね」
「なるほど、さすがです」
なんだか、二人仲良くなってる。
佐久間くんは一方的に知ってる感じだったし、話すのは初めてだよね。
高嶺の存在だなんて言っていたけどものおじしないし、コミュニケーション能力高いな。
そうしている間に私は日替わりランチを食べ終えたので、トレーを片付けようと席を立つ。
「俺も行く」
佐久間くん、あんなにたくさんあったのにもう食べ終わったんだ。
二人で返却棚へ向かいながら、小声で話しかけてくる。
「いつから付き合ってたの?」
「えっと……配属された日から」
「え?! その日に?」
「うん。実は松永先輩は大学のサークルで一緒だったんだよね」
そうだったんだ、とさらに驚いた様子だった。
「付き合ってること知らなくて、俺無神経なこと言ったかも。ごめん」
先輩と日高さんがお似合いだって言ったことかな。
たしかに少し気にしてしまったけど、それは佐久間くんのせいじゃなくて、私が自分に自信がなかったから。
でも、もう大丈夫。
「そんなこと気にしなくていいよ」
「いやー、よくよく考えたら飲み会の帰りにたまたま会って一緒に送ってくれるなんて変だよな。なんで気付かなかったんだろう」
「私も怪しまれるかなって思ったんだけど、佐久間くん酔ってたし、それどころじゃなかったからね」
「なんにせよ、幸村が幸せそうで良かった」
「私、幸せそうにしてる?」
「うん。ちょっと前までは疲れた感じしてたけど、最近は楽しそう」
そんなふうに見えてたんだ。
私って、顔にでやすいのだろうか。
「企画、通ったら一番に幸村に報告するから」
「うん、ありがとう」
「こちらこそ、ありがとな」
食器を返して席に戻ると、ちょうど先輩もお弁当を片付けたところだった。
「戻りましょうか」
「そうだね」
先輩はお弁当を持って席を立つ。
「佐久間くんはもう少し私に付き合ってくれない?」
「えっ、はい、俺で良ければ」
日高さん、なんだか佐久間くんのこと気に入ったみたいだな。
佐久間くんも戸惑ってはいるけど、ちょっと嬉しそう。
私と先輩は二人で食堂を出る。
「さっき佐久間くんとなに話してたの?」
「いつから付き合ってたのかって聞かれて。佐久間くんに言ってもよかったですか?」
「僕はかまわないよ。むしろ言いたかったし」
「え? そうなんですか?」
思えば、元々は私が配属されたその日に付き合い始めたなんて言えないから、秘密にしておきたいってお願いしたんだった。
先輩は、そうじゃなかったのかな。
「まあ、言って回るようなことではないけどね。仲良い人には言ってもいいんじゃない?」
「そうかもしれませんね」
仲良いっていっても、会社ではあとは他の同期二人くらいだけど。
先輩は、報告するような仲の良い人いるのかな。
「幸村さんは、企画開発部に行きたいと思ってるの?」
「いつか、異動できたらいいなとは思います。だけど私、経理部の仕事も好きなんです。会社のお金の流れとか、実態とかがよくわかりますし、いろいろな部署の人たちの関わりも多くて、はじめに配属されたのがここでよかったと思っています。しばらくは、経理部で頑張っていきたいと思ってるんですよ」
「そっか。経理の仕事好きだって言ってもらえて良かった」
「先輩のおかげですよ」
教え方もわかりやすいし、先輩が隣にいると頑張ろうと思える。
いつかもし結婚するなんてことになったら同じ部署にはいられないし、そのときは移動になるんだろうか。
なんて先のことを考えてみたりした。



