ぜんぶ、ちょうだい。




「なにその顔?」



泉先輩が、私の顔を見て顔をしかめる。



「今日、ずっとモヤモヤしてて…」



先輩に会えたのに。嬉しいはずなのに。
でも、心は晴れない。

先輩はそんな私をそっちのけで、靴を履き替えに行く。

……あ、待って。

置いてかれないように、私も急いで靴を履き替える。



「先輩、一緒に帰りませんか?」



ひょこっと顔を出して言ってみたら――

先輩は、嫌そうな顔。

……素敵ですね、その顔。


先輩はため息をつきながらも、隣を歩いてくれる。

すき。やっぱり、好き。

ひまちゃんとか、清水とか、家族に対するそれとは違う。
だって、隣に並んで歩くだけで、ドキドキする。

……あ。

でも。

今日は、すぐにもやってする。



「さっきから、その顔なんなの? そっちから一緒に帰ろうって誘ってきたんだろ」

「ん?えっ?」

「なに怒ってんの?」

「いや…怒ってるというか…」



なんなんだ、これは。

先輩と一緒に帰るチャンスなのに、全然集中できない。