ぜんぶ、ちょうだい。




泉先輩の背中が遠ざかっていくのが、どうしても耐えられなくて、咄嗟に腕を掴んだ。



「なに」



振り返った先輩の声は、低くて冷たい。



「いや、あの…」



言葉が出ない。
わー……先輩の腕。触れてしまった。
恥ずかしくなって、すぐに手を離す。

先輩は、嫌そうな顔をした。
でも、その顔も、正直、素敵だった。



「もし明日の朝またいたら、容赦しないから」



ピシャッと、壁を作られた。
そのまま、泉先輩は歩いて行ってしまう。


うううっ……。

分かってた。分かってたけど!

ほんとに、清水の言う通りだったんだ。避けられてたんだ。

その場にしゃがみ込む。
段ボールはもう置かれていて、私の手元には何もない。

悲しい。

でも――

昨日も、今日も、助けてくれた。
泉先輩は、私を守ってくれた。
言葉は冷たいけど、行動は優しい。


……やっぱり、好き。

こんなの、どうしたら諦められるっていうの。