ぜんぶ、ちょうだい。




「今日、挨拶できなくて残念でしたっ」



精一杯、明るく言ったつもりだった。
へらっと笑って、冗談みたいに。本当は、心臓がどくどくしてた。


でも――



「避けてたからね」



泉先輩は、あっさりと言った。まるで、天気の話でもするみたいに。

……さらっと、言わないでくださいよ。



「やっぱり、私がストーカーだからですかっ?」



もう、いい。 認めますよっ。
さっきの人たちにも言われたし? 私、泉先輩のストーカーですよっ。



「それもあるけど…」



……それも、あるけど?



「うるさい。しつこい。目障り」


「へ…」



言葉が、胸に突き刺さる。思わず、声が漏れた。



「俺はもっと、静かに生きたい」



そう言って、泉先輩はまたスタスタと歩き出した。
私は、その場に立ち尽くす。

……静かに生きたい。

わかってる。わかってた。

でも、好きになってしまったんだ。
泉先輩の、あの静けさも、冷たさも、全部含めて。

だから、簡単には引けない。