ぜんぶ、ちょうだい。




横を通り過ぎようとした瞬間、パシッと、腕を捕まれた。



「ね、吉川小鞠ちゃんだよね?」

「へっ…?」



え……? なんで、私の名前……知ってるの?



「あー!もしかして、泉のストーカー?」



もうひとりが、私を指さして言った。

す、ストーカーって……。
いや、確かに、本人にも言われましたけども。
でも、こうして他人の口から聞くと、破壊力が違う。



「ストーカーっていうから、どんなやつかと思ったら…」

「結構可愛くね?」



……か、かわいい?

え、なに? 私がストーカーって話じゃないの?


それよりも――



「あの…えっと、手を…」



声がうまく出ない。腕を掴まれたまま、どうしていいかわからない。



「旧校舎持ってくの?一緒に行くよ」

「いや、あの…」



言葉が詰まる。
なんだか、怖い。
親切そうに見えて、どこか軽い。

段ボールを取られそうになった瞬間――

ひょいっと、反対側からそれが持ち上がった。



「い、泉…」


私の段ボールを取ったのは、泉先輩だった。



「いや、これはな…このストーカーが泉のことずっと見てたから注意しようと思って!」



……いや、まあ。事実だけども。


チラッと泉先輩の顔を見上げる。

昨日ぶりのこの距離。
でも、昨日とは違う。怒ってる。はっきりと。

眉が少し寄っていて、目が鋭い。
口元はきゅっと結ばれていて、何も言わなくても、怒ってるのがわかる。


……怖い。