【完】ぜんぶ、ちょうだい。




着いた先は、先輩が住んでいる一人暮らしのアパート。

ドアを開けると、最初に来た頃よりも、キッチン周りに物が増えているのが分かる。

私のおかげ、たぶん。



「先輩、ちゃんとご飯食べてます?」



少し心配になって聞くと、先輩はあっさりと答えた。



「食べてる」



上着を脱いで、ハンガーにかける。

その仕草も、もう見慣れたものになった。二人用のソファに腰を下ろすと、先輩が振り返って言う。



「何か飲む?りんごジュースあるけど」



先輩の中では、私はいつまでもりんごジュースが好きなままらしい。

……実際、そうだから何も言えない。



「今日は、パジャマ買ってきました!」



少し得意げにそう言ってから、袋の中身を取り出す。



「同棲始めたと同時に、新調しようと思って!」



じゃーん、と広げたのは、某ブランドの、猫のイラストが描かれたパジャマ。

先輩はそれを見て、小鞠っぽい、と少しだけ口角を上げた。