【完】ぜんぶ、ちょうだい。




電車に乗り遅れる。
……遅刻、確定だ。


「すみません、少し遅れます!」と歩きながら、ほとんど反射みたいにラインを送る。既読がつく前に、ホームへ続く階段を駆け下りた。


結局、乗れたのは予定していた電車の2本後。

10分ほどで目的の駅に着いて、電車を降りる。
改札を抜けると、思わず足が止まった。

出口のところに立っている、見覚えのある姿。



「……先輩!」



声を上げながら、若干小走りで駆け寄る。



「え~!?わざわざ迎えに来てくれたんですか!?」



勢いそのままに言うと、うるさい、と一言。
あ、これ、通常運転だ。



「買い物、楽しかった?」



そう聞きながら、先輩は何も言わずに私の荷物を受け取る。そして空いた手で、当たり前みたいに私の手を取って、指を絡めてきた。


……スマートすぎる。


私も私で、恋人繋ぎにはだいぶ慣れた、と思う。
まだ緊張はするし、普通に手汗もかくけど、それでも前よりは自然に受け止められるようになった。