【完】ぜんぶ、ちょうだい。




式が終わって、約束していた校舎裏のほうへ向かう。
拍手やざわめきは少しずつ遠ざかっていって、足音だけがやけに大きく聞こえた。


校舎の影に入ったとき、視線の先にその姿があった。
卒業証書を手に持って、桜を見ている先輩。


風に揺れる花びらと、少し緩んだ横顔を見た瞬間、胸がきゅっとなる。


この姿を、もう見ることがないんだな。
そう思ったら、また目の奥が熱くなって、ウルっときた。



「小鞠。いたんなら、声かけてよ」



振り返った先輩は、そう言って笑う。
私に気づいて、一歩ずつ近づいてくる。

その距離が縮まるたびに、心臓の音が大きくなっていく。



「なんで泣いてるの」



困ったみたいに、でも優しく笑いながら言う先輩が、ずるい。



「……っ、だ、だって~……!」



声がうまく出なくて、言葉にしようとすると喉が詰まる。



ずっと、いてほしかったんだもん。

当たり前みたいに、明日も来週も先輩がそこにいると思ってた。

離れたくないんだもん。