【完】ぜんぶ、ちょうだい。




体育館に集まる卒業生の中から、先輩の姿を見つけることは、たぶんほぼ不可能。


わかってるのに、それでも無意識に、視線は人の波を探してしまう。

先輩は、今どんな気持ちでいるんだろう。

やっと卒業だー!って、すっきりした顔をしてるのかな。
それとも、私と同じで、少しだけ寂しい?



……ねえ、先輩。

私のこと、思い出したり、してくれてる?



泣きそうになるのを、ぐっとこらえて、前を向く。


目を伏せたら、たぶんだめだから。
一度涙が落ちたら、もう止まらなくなりそうで。




体育館に、静かな声が響く。
卒業生代表の答辞。

鼻をすする音が、あちこちから聞こえてきた。
誰かが泣いている気配がすると、それだけで胸がつられる。



『この日を迎えるまでの三年間、さまざまな出来事がありました』



……あぁ。

ほんとに、そうだなって思う。
先輩と過ごした時間も、思い返せば、いろいろあった。

毎朝の挨拶。
元気よく声をかけたら、嫌そうな顔をされた。