【完】ぜんぶ、ちょうだい。




今日は、卒業式。


この言葉を頭の中で何度も繰り返しているのに、まだ現実って感じがしない。
大好きな先輩が――今日で、この学校を卒業してしまう。

体育館の床は、朝から少しだけ冷たくて。
椅子に座ったまま、足先に伝わるひんやりした感触に、無意味に意識が向く。



「こまちゃん、寂しくない?」



式が始まる前。
隣に座るひまちゃんが、顔を近づけてコソッと囁いてきた。


……もう。
その質問、ずるい。



「ひまちゃん、それ聞いたらだめなやつ…!」



笑って言ったつもりなのに、声が少し震えたのが自分でもわかる。
だって、そんなこと聞かれたら――泣いちゃうに決まってる。


ひまちゃんは一瞬きょとんとして、すぐに「あ、ごめん~」って小さく言いながら、私にぎゅっと抱きついてきた。
胸の奥がきゅっとして、我慢していたものが溢れそうになる。


連日、雨が続いていた。朝も、窓の外を見ながら、今日も曇りかな、って思ってた。

でも今日は、晴れ。

カーテンの隙間から差し込む光みたいに、体育館の窓から入る日差しが、やけに眩しい。


よかった。
卒業式の日が、雨じゃなくて。