【完】ぜんぶ、ちょうだい。




先輩の色気や距離の近さに、私はとっくに限界だった。

気づけば先輩の袖をぎゅっとつかんでいて、助けを求めるみたいに、そのまま見上げてしまう。


先輩は小さく息を吐いて、手のひらを額に当てた。



「……そういうの、よくないって」



そういうのって、どういうの?って思うけど、聞き返す余裕はなかった。

指の隙間から覗く先輩の視線が、やけに熱い。

見られていると気づいた瞬間、ぶわっと一気に顔に熱が集まって、頬から耳までじんじんしてくる。



「小鞠。あんまり可愛いこと言わないで」

「へ?」



先輩は一度視線を逸らしてから、ぽつりと続ける。



「……泣かれると、どうしていいか分かんなくなるのに。俺がいなくなるのを寂しがってる小鞠が、かわいくてしょうがない」



心臓がどくん、と大きく鳴った。

はあー、と息を吐いて、ちらっと横目で私を見る先輩は、いつもの先輩じゃない。

さっきのキスもそうだけど、今はただ、男って感じがして、優しいのに余裕がなくて、その全部が直視できないほどだった。


なんて言えばいいのかわからない。

ただ、とにかくハレンチだと思う。

近くにいるだけなのに、色気に当てられて、頭がぼうっとしてしまう。