「……っ、ん……」
うまく呼吸する方法が分からなくて、無意識に手に力が入る。
先輩のブレザーをぎゅっと掴むと、それに応えるみたいに、距離がさらに縮まって、胸がぎゅっと締めつけられた。
唇が重なって、さっきよりも、ずっと深くて、長くて、ぬめりを帯びた感触に、頭が追いつかない。
なに、これ――
そう思って、思わず少しだけ口を開いた瞬間、入ってきた感触に、これは先輩のだ、と遅れて理解する。
「……ん……っ、は……」
どうするのが正解なのか分からなくて、逃げるみたいに、舌を引っ込めた。
すると、先輩の唇が、ふっと離れる。
肩で息をする私と、それをじっと見下ろす先輩。
……余裕が、違いすぎる。
心臓は壊れそうなくらい鳴っているのに、先輩はどこか落ち着いていて、その差が、あまりにもはっきりしていて。
あー……。
水元先輩とだって、きっと経験あるよね。
そんなことが、一瞬だけ頭をよぎったけど、ほんとうに、一瞬だった。
だって今、ここにいるのは、私を泣かせて、抱きとめて、こんなふうに触れてくる、この人で。
その事実だけで、胸の奥が、またぎゅっとなった。



