先輩は、そんな私を見て、一瞬だけ息を詰まらせたあと、私の手首をぎゅっと掴んだ。
「……っ、」
「小鞠に泣かれると、どうしたらいいか分かんなくなる」
その声は、低くて、苦しそうで。
見上げると、先輩は泣いている私よりも、ずっとつらそうな顔をして、ぎゅっと唇を噛みしめていた。
違う。こんな顔、させたかったわけじゃない。
私は、先輩に何を求めているんだろう。
どうしてほしいんだろう。
「ずっと好きだよ」とか、「離れても大丈夫」とか、そんな甘い言葉を、先輩が言うはずないことくらい、分かってる。
それを求めているわけじゃない。
ただ――安心したいだけなんだ。
先輩のそばにいていいんだって。
この時間を大切に思っていいんだって。
終わりが来ることを、今すぐ考えなくていいんだって。
それだけでいいのに。
涙で滲んだ視界の向こうで、
先輩の手の温度だけが、やけに現実的で。
私は、その温度にすがるみたいに、小さく、息を吸った。



