【完】ぜんぶ、ちょうだい。




「付き合う前さ、俺、卒業したら、小鞠に寂しい思いさせるだろうなって考えてた。それで、付き合うか迷った」



胸が、ぎゅっと締めつけられる。



「でも、それは仕方ないことだから」



先輩は、まっすぐに私を見る。



「だから、あと数か月は、小鞠と楽しく過ごしたい」



――あと、数か月。


私は、何も言えないまま、ただ先輩を見つめ返す。
泣きそうなのは、変わらない。


でも、それでも。
この人は、ちゃんと一緒にいる時間を選んでくれている。


嬉しい。
すごく、すごく、嬉しいはずなのに。


なのに――

ぽろっと、涙がこぼれてきてしまった。



「……あ、れ」



こんなはずじゃなかったのに。
笑って、「はい!」って答えるつもりだったのに。


慌ててお箸を置いて、手の甲で涙を拭う。
でも、止まらない。