【完】ぜんぶ、ちょうだい。




まあ?
別にいいけどね?
メイクなんて、男の人に見せるためのものじゃなくて、自分のモチベーションとか、自己満足のためのものだし?


そんなふうに、必死に自分を納得させながら、私はお弁当袋を取り返して、お弁当箱を開ける。


その間ずっと、私のことを、優しい目で見ている泉先輩がいるなんて、気づくはずもなく。



「小鞠。これから、できるだけ昼一緒に過ごそうよ」



ふいにそう言われて、手が一瞬止まる。
気づいたら、呼ばれ慣れてしまった私の名前を、自然に、呼び捨てで呼ぶその声。


――できるだけ、一緒に。


その言葉の奥にあるものを、勝手に想像してしまって、胸がいっぱいになる。
うれしくて、せつなくて、同時に、少しだけ寂しい。



「……もう少しで、卒業、ですか」



卵焼きを口に入れながら、ぽつりとこぼす。
すると先輩は、少し間を置いて、そーだな、と短く答えた。


そうですよ。
いなくなるんですよ、先輩。