【完】ぜんぶ、ちょうだい。




そうやって、必死に前向きなことを考えようとするのに、ふいに、さっきの水元先輩との会話が頭に浮かぶ。


――卒業。


先輩、卒業しちゃうんですよね。
その事実が、今さらみたいに胸に落ちてきて、息が詰まる。


気づいたら、うつむいていた。
目線は床。つま先の影だけを見つめている。
さっきまでのドキドキとは違う、静かな不安が胸に広がる。


……でも。



「……って、こんなことしてる場合じゃないんだった……!」



はっとして、顔を上げる。
そうだ、泉先輩からラインも来てたのに、待たせちゃってる。


慌ててスマホを握りしめ、廊下を小走りで進む。
向かう先は、旧校舎の教室。


扉越しに見えた。
教室の中、窓際の席。外に顔を向けて座っている泉先輩。


……あ。


胸が、きゅっと鳴った。
お弁当、まだ手をつけていない。
待ってて、くれたんだ。


その事実だけで、どうしようもなく胸がいっぱいになる。
きゅーん、と音がした気がして、愛しくて、愛しくて、なぜか、今にも泣いてしまいそうだった。