【完】ぜんぶ、ちょうだい。




「恋愛なんて、楽しいことばかりじゃないし、付き合ってからのほうが、きっと大変なことたくさんだけどね…小鞠ちゃんなら、きっとうまくいくよ。私が、保証する!小鞠ちゃんと会えなくなるの、私も寂しいし!」



あー、もう。どうしてこんなに嬉しいことばかり言うんだろう。

私と水元先輩は違うから、目指す必要はないって、言われた。分かってる。分かってるのに、やっぱり憧れちゃう。


心の奥で小さな憧れが膨らんで、胸の奥がちくちくする。


――私…水元先輩みたいになりたいです。


そう小さく呟いた瞬間、先輩はふふっと笑った。



「えー、ならなくていいよ。そのままで十分かわいいじゃん」



ああ、やっぱりこの人、すごいな。誰にでもできることじゃない。

そういうところが、いいなって、思うんですよ。



「じゃ、私行くね!かおにごめんって言っといて~」



水元先輩は軽やかに笑いながら去っていった。

その背中を見送ると、トイレの中にひとり。
静かな空間で、改めて鏡の前に立ち、自分の顔を見つめる。