【完】ぜんぶ、ちょうだい。




頭の中は混乱しても、体はされるがまま。
鏡の前に立たされ、先輩はポーチをがさごそと探し始める。



「えーっと、水元先輩…?」



思わず声をかけると、先輩はにこっと笑った。



「あぁ、ごめんね、急に。昨日、撮影でもらったコスメがいくつかあってさ。その中に合わない色とかもあって、小鞠ちゃんは私とパーソナルカラー真逆だから、もしかしたら合うんじゃないかなって」



ポーチから取り出されたのは、アイシャドウやリップ、チークやブラシまで、色とりどりのコスメたち。

先輩はその全部を鏡の前に並べながら、メイクさせて!と、私が断らないと思ってるのか、自信満々な声で言う。



「してもらいたい気持ちは山々なんですがっ! 実は私、泉先輩とお昼、約束してましてっ!」



それでも先輩はにやりと笑い、ぐいっと距離を縮めて言う。



「えー、じゃあ尚更かわいくしないとじゃん?」



えっ、強引…!


次の瞬間、目を瞑らされ、瞼に筆がそっと触れる。
柔らかい感触が走り、ドキドキが止まらない。


泉先輩、もう来てたらどうしよう…。


それでも、心のどこかで、女子ならではのワクワクも湧いてくる。
だって、水元先輩からメイクレクチャーされるなんて、全女子の夢だ。