【完】ぜんぶ、ちょうだい。




そんなことを考えているうちに、気づけばもう先輩の家の前に立っていた。


早すぎる。
心の準備、全然できてないんですけど――!



どうぞ、と促され、お邪魔します、と小さく頭を下げて先輩の“聖域”に一歩踏み入れる。
その瞬間、先輩の匂いがふわっと漂ってきて、どうにかなりそうで、思わず息を止めてしまう。



「先輩、私……今日が命日なのかもしれないです」



思わず口に出した言葉に、自分でも赤面する。



「意味わかんないこと言ってないで、靴脱ぎな」



先輩の育った場所にこれるなんて、前世でどんな得を積んだんだろう、とちょっと真剣に考えてしまう。

もう一度、心の中で小さく、お邪魔します、とつぶやき、先輩の後をそっと追う。


リビングに入ると、先輩は



「親仕事だし、誰もいないから」



と呟き、ブレザーを雑に脱いでソファにかけた。


誰もいないって……それはそれで、ドキドキしてしまう状況で。


ドキドキしている暇もなく、先輩にソファに座らされ、救急箱を手渡される。

膝を見る視線と心臓の高鳴りが重なって、もうどうしていいかわからない。