「もう、いいから黙って着いてきて」
そう言って、先輩は私の腕をグイっと引っ張る。
問答無用で歩き出す背中に、反論する暇もなかった。
チラ、と。
見たくないのに、つい膝に視線が落ちる。
思ったよりもずっと広範囲を擦りむいていて、じわっと赤くなっているのを見た瞬間、また涙が込み上げてきた。
「うぅっ……い、いたい」
「家近いから我慢して。それとも、おんぶでもする?」
さらっと言われて、思考が一瞬止まる。
いやいや、それはさすがに……。外だし、人目もあるし。
「……ぜひ、お家でやってもらいたいです」
「意味ないだろ、それ」
でも、だって。今は恥ずかしいけど、先輩とぴったりくっついてみたいんだもん。
膝はズキズキ痛むはずなのに、おんぶとか、お姫様だっことか、勝手に頭の中で妄想が広がっていく。
先輩の背中とか、腕とか、近さとか。
考えていたら、さっきまでの痛みなんてどこかへ行ってしまった。



