【完】ぜんぶ、ちょうだい。




「まあ、先輩には分からないでしょうけどっ!私は今、先輩のことが好きすぎて怒ってるんです」



そう言いながら、背中越しに見える先輩の姿に胸が高鳴る。

背中でさえかっこいいし、歩く姿勢や仕草、少し面倒くさそうに、前見て歩け、って言う声までも、なんだか好きでたまらない。



「…って、う、わっ…!?」



次の瞬間、運命の悪戯のように足元の段差につまずいてしまった。

背中を見続けていたせいで、気づくのが遅すぎた。


顔からそのまま地面へダイブ――運動神経が悪いとかそんなレベルじゃない。



「いっ…い~~っ!!」



顔も、膝も、手も……どこもかしこも痛い! 

立ち上がれないし、恥ずかしいし、もうどうしようもなく半べそ状態になってしまう。


すると上から、ぶっきらぼうな声がかかった。



「何してんの」



立てる?顔あげれる? 

聞かれた途端にまた恥ずかしさで顔が赤くなる。



「むっ、むりぃ~…!!」

「はいはい」



その声に続いて、先輩の手が私の脇の間にスポッと入り、軽く持ち上げられる。

思わず力の強さに驚くけれど、今はそんなことより――先輩の手に支えられている、この感覚だけで心臓がバクバクしてしまう。


い、意外と力持ち!!


……なんてことは、今はどうでもいい。