【完】ぜんぶ、ちょうだい。


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「で?なんで今日はそんなに離れてんの?」



先輩との距離は約二メートル。

少し前を歩く背中を見つめながらついていく形になっていたら、ふいに振り返って、そう言われた。

急に視線が合って、心臓が一気に跳ねる。


だって。

だって……だって!!


本当はすぐ後ろを歩きたいし、できるなら腕に触れたいし、なんなら――抱き着きたい!

でも、それを必死に我慢しているところなんです。



「先輩のこと大好きすぎて、抱き着きたいの必死に抑えてるんですっ……!!」



勢いで言ってしまってから、少しだけ後悔する。でも、嘘じゃない。


朝、あんなことがあったせいで、授業中もずっと余韻がすごかった。
ノートを取っていても、先生の声を聞いていても、頭の片隅には先輩の顔ばかり浮かんで、集中なんてできなかった。


今だってそう。
平静を装ってるだけで、本当はずっと抑えてるんですから。


むっとした顔で先輩を見つめると、先輩は少し間を置いてから、なんだよそれ、と呆れたような声を出した。