【完】ぜんぶ、ちょうだい。




この距離、この角度、この空気感。冷静でいられるわけがない。
視界に映るのは先輩だけで、逃げ場もなくて、心臓の音が自分でも分かるくらいうるさい。



――無理。
この状況、絶景すぎる。


今ここで天に召されてもおかしくないんじゃないか、なんて馬鹿なことを本気で考えてしまうくらいには、私は完全に追い詰められていた。



「で?誰が一方的に好きだって?」

「……っ、」



情けない声だけが漏れて、逃げ場のない視線に捕まったまま、ただ瞬きを繰り返すしかなかった。



「放課後、死ぬほど分からせてやるから。覚悟しとけよ」



そう言い切られて、意味を考える前に、先輩の指が私の前髪に触れる。

そっと掬い上げるみたいな仕草で前髪を避けられて、あらわになったおでこに、ちゅ、と軽い音が落ちた。