【完】ぜんぶ、ちょうだい。




先輩は一瞬、驚いたようにこちらを見て、ほんの少しだけ、眉間にしわを寄せた。


……あ、ちょっと、うるさかったかも。


清水が、そのまま泉先輩のほうへ歩き出す。

それを見て、私は迷うことなく、後を追った。


気になるよ。
普通に。


もう一度、近くまで行って挨拶をすると、今度はちゃんと、おはよって、返してくれた。

でも次の瞬間、泉先輩の視線が、すっと隣にいる清水へ移った。



「泉先輩、朝からすみません。俺、吉川のクラスメイトの清水って言います。少しだけ、時間もらってもいいですか」



突然すぎる自己紹介に、私は何も言えず、ただ二人の横顔を見る。



「別にいいけど」



泉先輩はそう言いながら、周りを軽く見回した。

この時間帯に、ここで話すの?

そう思ったけれど、清水の表情を見て、口を閉じた。
ふざけてる感じは、一切ない。
冗談でも、軽いノリでもない。

水を差すようなことは、言えなかった。