【完】ぜんぶ、ちょうだい。




「清水!待って!」



廊下に出たところで、清水は少しだけ足を止めて、面倒くさそうに振り向く。



「……なんだよ」



なんだよ、って。
なんだよもなにも。



「先輩と、何話す気?」



清水のことは、先輩には話していない。

というか――
キスしてしまった、という事実は、付き合う前にちゃんと伝えたけれど。
それが、誰だったのかまでは、一切、話していない。

先輩は、「そういうのどーでもいい」なんて言っていたし。

……それはそれで、どうなんだ?って思わなくもなかったけど。

私から、わざわざ掘り返すような話でもないし。

それに。

清水とは、友達でいたかった。
その気持ちも、正直、少し混ざっている。

私の、わがまま。



「別に、お前の話するわけじゃねーから」



ぶっきらぼうにそう言って、清水は肩をすくめる。



「気になるなら、いれば?」



……じゃあ、なおさら、なんの話なの。


そう突っ込みたくなった、そのとき。

視界の端に、見覚えのある姿が映った。

泉先輩。



「あ、泉先輩!おはようございま~す!」



少し遠い位置からの挨拶になってしまって、声も、いつもより大きい。