「先輩の行きたかったところって……まさか、ここですか?」
思わず足元の看板と、もう一度先輩の顔を見比べてしまう。先輩は当然みたいに頷いて、
「そう。吉川、甘いもの嫌い?」
って、聞いてきた。
「い、いや……私は大好きなんですけど。でも、先輩は苦手っぽいじゃないですか。それに、雰囲気よさそうなお店で……ちょっと意外だなって……」
カフェとか、こういうところ。
正直、先輩にはあんまり結びつかなかった。前に見たときだって、飲んでたのはブラックのコーヒーだったし。
私の言葉を聞いて、先輩は一瞬だけ考えるみたいな間を置いてから、
「吉川、好きそうだなと思って」
さらっと、なんでもないみたいに言った。
そして、ちらっと私のほうを見ると、そのまま歩き出す。
……ずるい。
胸が、きゅーんって音を立てた気がした。もう、本当にいっぱいいっぱいで。先輩が、私のこと考えてくれたんだ、とか。それだけで、十分すぎるくらい嬉しくて。
しかも。
手を離す素振りもなく、そのまま、自然に店内へ入っていく。
……いいんですか。
店員さんに、見られてますよ、先輩。
それに。
こんなのされたら。
つけあがっちゃいますよ、私が。



