【完】ぜんぶ、ちょうだい。




いたたまれなくなって、ほんの少しだけ距離を取ろうとすると、グイっと手を引き戻される。
そのまま、ちらっと睨まれて、何も言えなくなる。


そんなの、反則でしょう。
どうしようもなく、胸が高鳴ってしまう。


ドキドキ、ドキドキ。


こんなの、初めてだ。男の子と手を繋いだのなんて、中学生のときのフォークダンス以来で、そのときの相手とは、まるで違う感覚だった。

先輩の手は大きくて、少しゴツゴツしていて、包まれているだけで逃げ場がない。


それに、私の心臓も、全然違う。

あの頃はただ恥ずかしかっただけなのに、今は苦しくて、嬉しくて、うるさくて。
好きな人と触れ合うって、こういうことなんだって、今になってやっとわかる。


離れたくない、なんて思ってしまう自分に驚きながら、その感覚を、ひとつひとつ噛みしめていた。


好きだ。
どうしよう。

そんな言葉が、頭の中で何度も回る。チラ、と先輩を見上げると、相変わらず真顔で、何を考えているのか全然わからない顔をしている。