【完】ぜんぶ、ちょうだい。




「こ、これは……いわゆる、恋人つなぎ、というものでしょうか……」



勇気を振り絞って言ったのに、先輩は少しだけ面倒そうに、



「いちいち言わなくていーんだよ、そういうことは」




だって。だってね、先輩。


周りには、こんなに人がたくさんいて。
同じ学校の人もいるし、きっと、先輩のファンだって、どこかしらにはいるわけで。


そんな中で、私なんかが。
私ごときが。

泉先輩を、独り占め、していいのかって。
どうしても、思っちゃうんですよ。


冷たそう、なんて勝手に憶測していた先輩の手は、意外にもあったかかった。


指先からじんわり伝わってくる熱に、それだけで胸の奥がそわっとする。


恋人つなぎのせい――というか、おかげというか、それでいつもより距離が近いわけで、歩くたびに肩が触れそうになるのが、どうにも落ち着かない。