【完】ぜんぶ、ちょうだい。




昇降口は、同じように帰る生徒でいっぱいで。
人混みを、すり抜けて、避けて、とにかく前へ。


校門まで、全力疾走。



「せんぱーーいっ……!」



思いきり声を張り上げた瞬間、喉の奥がひりっとした。

……やばい。久々に、こんな全力で走った気がする。

校門の前で立ち止まると、息が追いつかなくて。
はあ、はあ、って、肩で呼吸するしかなかった。


その様子を見て、スマホを触っていた先輩が顔を上げて――クスッと、笑った。


……ずるい。
麗しいな、って、一瞬、そんな言葉が頭に浮かんで。


いや、今それどころじゃない。



「お、遅くなってすみませんっ!先輩、結構……待ちました?」



せっかく、先輩の方から誘ってくれたのに。



「俺も、今来たばかりだから」


優しい声で、さらっと言う。

……絶対嘘。でも、そうやって気を遣ってくれるところが好きで、胸がぎゅーっと締めつけられる。
私はひとりで勝手に感動して、勝手に舞い上がっているだけなのに。


すると先輩が少しだけ間を置いてから、私のほうを見て言った。



「行きたいとこあるんだけど」



その一言で、また心臓が跳ねる。

続けて先輩は、わざわざ確認するみたいに、「……いい?」と聞いてきた。


断れるわけ、ないじゃないですか。