【完】ぜんぶ、ちょうだい。




「こまちゃん、しっかりしてっ」



私の向かい、さっきまで先輩が座っていた席に、ひまちゃんがどん、と腰を下ろした。
お盆には、かつ丼。

……ちょ、ちょっと待って、ひまちゃん。



「今日、お弁当持ってきてたよね?」



小声で聞くも、ひまちゃんは気にする様子もなく、両方むしゃむしゃ食べ始める。
小さい体によく入るな、と感心。


私はというと、お弁当を食べながらも、まったく味を覚えていなかった。

視線はずっと、ひまちゃんの頭の向こう。


ひまちゃんが少し身じろぎをすると、俯いたり、顔を上げたりすると、
その隙間から――

ちらっと、泉先輩が見える。


そのたびに、胸が、きゅっと鳴った。


かっこいい。
って、思ってしまう。

好き。
って、心の中で小さくつぶやいてしまう。


(あ、今見えた……)


それだけで、お箸を持つ手が一瞬止まる。