【完】ぜんぶ、ちょうだい。




「……私ね」



ひまちゃんが、少しだけ声を落とした。



「泉先輩、こまちゃんのこと特別に見てたと思うよ。無表情で、無感情だって思ってた先輩がさ。昨日、すごい顔してこまちゃんのこと追いかけていったんだもん」



……そんなの、知らなかった。



「清水とくっついたらいいなって、思ってはいたけど……。後悔したまま、こまちゃんの初恋、終わってほしくないよ」



胸の奥が、きゅっと鳴った。



「……ひま、ちゃん」

「だからさ」



ひまちゃんは、私の方をまっすぐ見る。



「清水のこと、きっちり終わらせてからでいいじゃん。それから、また泉先輩に気持ちぶつければいいじゃん」



そんなの――
ずるいくらい、私に都合のいい言葉なのに。



「『あんなこと言ったくせに』って思われてもいいじゃん。『もう来るな』って言われたとしても、いいじゃん」



ひまちゃんの目が、うるうるしてくる。



「だって、それがこまちゃんだし」



一瞬、言葉が詰まって。



「……私は、そんなこまちゃんが、好きだしっ」



綺麗な目に溜まった涙を見て、思わず笑ってしまう。

なんで、ひまちゃんが泣きそうなの。