神宮寺家の不正が白日の下に晒され、世間を騒がせた嵐はようやく収束を迎えた。
鳳条グループは信頼を取り戻し、怜司の立場も揺るぎないものとなった。

その功績の陰に紗良の行動があったことは、限られた人々だけが知る真実だった。



夜、邸宅のバルコニー。
満天の星空の下、怜司と紗良は並んで立っていた。
冷たい風が頬を撫でるが、その距離は以前よりも近い。

「……迷惑をかけたな」
怜司が不器用に言葉を落とす。
「いいえ。私の方こそ……信じられなくて、ごめんなさい」

紗良の瞳が揺れる。
怜司は静かに彼女の肩を抱き寄せた。

「俺はもう二度と、お前を遠ざけない。たとえどんな敵が現れようと、紗良と一緒に乗り越える」

「……怜司さん」

紗良の胸に熱い涙が溢れた。



怜司はその涙を指で拭い、真っ直ぐに見つめる。
「冷たい仮面なんて、もう要らない。俺のすべてを知ってほしい」

「ええ……私も、あなたを信じて生きていきます」

二人の唇が静かに触れ合い、重なった。
疑念に覆われた日々も、孤独に震えた夜も、すべてが今、この瞬間に溶けていく。



「紗良」
「はい」
「愛している」

短く、それでいて何よりも強い言葉。
紗良は微笑み、震える声で応えた。

「私も……愛しています」



こうして、偽りに縛られた日々は終わりを告げた。
互いを信じ合う真実の愛が、二人を新たな未来へと導いていく。

――もう一度、恋をした相手は、最初からただひとり。
冷たい仮面の下に隠された、真実の愛の人だった。



夜空に輝く星々の下、二人は肩を寄せ合い、確かな一歩を踏み出していった。