深夜のオフィス。
高層ビルの最上階にある社長室は、煌々とした灯りに照らされていた。
怜司は机に広げた資料に目を走らせ、静かにペンを置いた。
「……これで、神宮寺側の動きは封じられるはずだ」
彼が目を通していたのは、西園寺グループと鳳条グループとの新たな協定案だった。
神宮寺家が裏から仕掛けてくるのを見越して、密かに動いていたのだ。
「怜司さま、ここまでして……」
秘書の結城が控えめに声をかける。
「奥さまにお伝えにならないのですか?」
怜司は椅子にもたれ、しばらく黙っていた。
やがて、低い声で答える。
「紗良を巻き込みたくない。俺が敵と渡り合っていることを知れば、きっと彼女は不安になる」
「しかし、誤解は深まるばかりです」
「分かっている……だが、今は耐えるしかない」
怜司の拳が机の上で固く握られる。
「彼女を守るためなら、どれだけ憎まれても構わない」
その頃、邸宅。
ベッドの上で紗良は眠れぬ夜を過ごしていた。
怜司が遅くまで帰らないことは、もう当たり前になってしまった。
「……どこで、何をしているの」
声に出せば出すほど、疑念が増していく。
(また玲奈さんと……?)
思いたくないのに、胸の奥で黒い影が囁く。
オフィスの窓から夜景を見下ろしながら、怜司は心の奥でただ一人の妻を思い続けていた。
(必ず守る。たとえ誤解されても……紗良、お前を失うわけにはいかない)
けれどその祈りは、まだ彼女には届かない。
二人を隔てる壁は、ますます厚く高く築かれていった。
高層ビルの最上階にある社長室は、煌々とした灯りに照らされていた。
怜司は机に広げた資料に目を走らせ、静かにペンを置いた。
「……これで、神宮寺側の動きは封じられるはずだ」
彼が目を通していたのは、西園寺グループと鳳条グループとの新たな協定案だった。
神宮寺家が裏から仕掛けてくるのを見越して、密かに動いていたのだ。
「怜司さま、ここまでして……」
秘書の結城が控えめに声をかける。
「奥さまにお伝えにならないのですか?」
怜司は椅子にもたれ、しばらく黙っていた。
やがて、低い声で答える。
「紗良を巻き込みたくない。俺が敵と渡り合っていることを知れば、きっと彼女は不安になる」
「しかし、誤解は深まるばかりです」
「分かっている……だが、今は耐えるしかない」
怜司の拳が机の上で固く握られる。
「彼女を守るためなら、どれだけ憎まれても構わない」
その頃、邸宅。
ベッドの上で紗良は眠れぬ夜を過ごしていた。
怜司が遅くまで帰らないことは、もう当たり前になってしまった。
「……どこで、何をしているの」
声に出せば出すほど、疑念が増していく。
(また玲奈さんと……?)
思いたくないのに、胸の奥で黒い影が囁く。
オフィスの窓から夜景を見下ろしながら、怜司は心の奥でただ一人の妻を思い続けていた。
(必ず守る。たとえ誤解されても……紗良、お前を失うわけにはいかない)
けれどその祈りは、まだ彼女には届かない。
二人を隔てる壁は、ますます厚く高く築かれていった。

