継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします

 元気に手を振った笑顔のセドリックを見送り、青空を見上げる。
 優しい風が吹き抜けて、私の髪を揺らした。
 なんとかなるわよね。だって──

「ヴェルヘルミーナ、お茶にしようか」

 ヴィンセント様が側にいる。
 大きな手にエスコートされた私は、これからの人生を送るお屋敷を見上げて「スミレの砂糖漬けはありますか?」と尋ねてみた。
 琥珀色の瞳が細められる。

「もちろん。好きなだけ食べればいい」
「一欠片だけでいいです」
「では、毎日一欠片、食べさせてあげよう」

 武骨な指が私の唇に触れた。

「自分で食べられますけど?」
「ははっ、いつになったら私に甘えてくれるのだろうな」

 そっと顎を上にあげられ、私の鼓動が跳ねた。
 次の瞬間、ヴィンセント様の端正なお顔が近づき、私に影を落とした。