四月のはじめ。


まだ桜が咲いている中、校門をくぐった。

何度も、何度も、制服のリボンをいじって。

私が行きたかったここの中学校の校舎を見るたびに、胸がうずうずして堪らなかった。


小学校とは違う、広くて騒がしい世界。
新入生でごった返していて、人の流れで体育館に行けそう。


ああ、楽しみ。

入学式なんて、小学1年生ぶりだ。

あの時はまだ、身長も小さかったし、正義感に溢れてたなぁ。

今は体も心もかなり成長して、それでも引っ込み思案なところは変わらない。

友達、できるといいなぁ。


私が受験したのは、制服が可愛い都内の中高一貫校。

胸元のリボンのチェックが可愛くて、着てみたくて、勉強を頑張った。

みんなが遊んでいる中、塾に毎日通うのは苦痛だったけど。

その積み重ねで「今」があると思えば、平気。


「え、咲久ちゃん!?中学、一緒だったんだ!」


聞き馴染みのある高い声がして、思わず振り向いた。
咲久(さく)。わたしの名前。

谷口玲杏(たにぐちれあ)ちゃん、だ。

一度も同じクラスになったことはないけど__

遠くから見ても輝かしい笑顔に、高い声。
いつも女子に囲まれている姿は、休み時間によく見ていた。

彼女も制服がとてもよく似合っていて、早速友達もできたようで「玲杏ー、早く体育館行こ!」と知らない誰かを連れている。

「待って、紗綾、莉緒!

あ、咲久ちゃんよろしくねー!」

わたしと彼女の出会いは、ここからだった。

初めは「一軍女子って、気が強そう」と躊躇っていたけれど、誰とでも明るく接する玲杏をみて、絶対に悪い人じゃない、と信頼できた。


そこから、昼食は一緒にお弁当を食べたり、移動教室は「玲杏、一緒に行こーっ」と共に移動したり。

わたしの中で、玲杏は『親友』だった。
いや、玲杏の中でもわたしは『親友』、そう思ってた。


__のに、それはわたしだけの思い込みだった。