「そんなの、知らない……」

凪翔兄と十年ぐらい一緒にいるけど、そんなこと、一つも知らないよ。

どういうこと……? とお母さんを見ると、お母さんはしまったとでも言うようにわたしから視線を逸らした。


なんで……?

看護師さんが去ってから、わたしはお母さんに詰め寄った。

「ど、どういうこと? 凪翔兄、ただ運動が苦手なだけだよね? 体が弱いとかっ……そんなの、聞いてない」

すると、お母さんは困ったように笑う。

「……本当は口止めされてたんだけどね。凪翔くんは、生まれた時から普通の人より病気にかかりやすくて、軟弱な体質なの。だから激しい運動をしたら呼吸困難になっちゃうし、学校もあまり行ってない」