何度も名前を呼ぶ。もしかしたら、何事もなかったみたいに起き上がってくれるかもしれない。そんな期待をこめて。

でも、当然のように凪翔兄は目も口も閉じたままだった。


やだっ……やだよ、凪翔兄……!

自然と、つーっと熱い雫がわたしの頬をつたっていた。


「なと、にぃっ……」


わたしの小さい呟きは、強くなってきた雨の音とどんどん近づいてくる救急車の音でかき消された。