「レイモンド、あなたはビアンカ様のことをどれだけ理解してましたか？　彼女は好成績でアカデミーを卒業して次期リード公爵になる予定だったお方ですよ。利発的で聡明でまさに私の理想の女性でした。あなたは彼女のことを大人しく扱いやすいなどと言ってましたね。あなたは王族です。あなたに言い寄られれば貴族令嬢は従順で控えめであらなければなりません。あなたは自分の地位を武器にして彼女を弄んだのですよ。そして手を出された上にあなたに捨てられたビアンカ様はサム国に行き場をなくしたのです。サム国にとって守らなければなかった大切な方で、きっと国を発展させる為に動いてくれた優秀な人材です」

私は怒りで声が震えるのを抑えながら彼に伝えた。
私がどんな思いで自分が虐待されてきたという恥を彼に伝えてきたのかを全く理解していない。

その上、自分が周囲の人にどれだけ酷いことをしてきたかも受け止めていない。

やはり、レイモンドは変わっていない。
私は彼ともう時を過ごすことも苦痛になりはじめていた。

「ビアンカ・リードが優秀なら私のしたことは結果、彼女ためになっていたと言うことですよね。優秀であれば万が一サム国が帝国領になったとしても帝国の要職につけます。帝国の要職につけば、贅沢な衣食住が保障されるではないですか」

レイモンドの言葉に私は世界がぐらつくほどのショックを受けた。
この人ともう１秒でも一緒にいたくはないと強く思った。