初対面で親切にしてくれたフィリップ王子に好意を抱き、私を服従させようとしたレイモンドには未だ彼の気持ちに対して疑惑の目を向けている。

私の言った通りにこの1年でレイモンドは政務に真剣に取り組み、周りの評価も驚くほど変わっている。
それなのに、私は初対面の彼の印象をまだ引き摺っていた。

1年という猶予期間を与えながら、1年前に結論を決めていたようなものだ。

「エレノア、そんな顔しないでください。そうだ、もうすぐアカデミーの長期休みですよね。どこか行きませんか?」
レイモンドが下を向く私の顔を覗き込みながら明るく話しかけてくる。
また、私は自分の基本顔の絶望顔をしていたのだろうか。