今日が私が彼と婚約解消をするか決めて良い日なのだからだろう。

思えば私に彼を暗殺するというカードがあるとはいえ、王族である彼が貴族令嬢に過ぎない私に婚約継続するかの判断を委ねてくれている。

出会った日に私を服従させようとした彼とは違い、私と対等な関係を築きたいという気持ちが伝わってくる。

アゼンタイン侯爵家はドレスなどを買う時も、デザイナーやお店の方が邸宅に来るので街に行く機会はほとんどなかった。
孤児院にいた1年間は結構うろついていたが、サム国がいかに裕福な国で活気がある場所かが分かる素敵なところで胸が高鳴ったのを覚えている。

だから、私は何でもない日の街を歩くのも人々のたくさんの幸せに出会えて好きだ。

「お祭りは誰と行ったのですか? その前になぜフィリップがエレノアを呼び捨てにしているのですか?」
矢継ぎ早に質問をしてくるレイモンドに私はため息が漏れた。