逃亡した帝国の公女は2人の王子に溺愛される。

突然彼の前に跪いて騎士の誓いをたてたという前科があるのだから、おかしな行動を起こさないようにも注意しなければならない。

突然、フィリップ王子の手に添えていた手を掴まれた。
アカデミーに新手のチンピラが潜んでいたのだろうか、あまりの不躾な行為に驚いて振り返ると怒った顔をしたレイモンドがいた。

「エレノア、お疲れ様です。今から、街に出かけませんか? フィリップ、いつも私の婚約者がお世話になっているようですね。あなたに教えられるようなことは、私にも教えられるのでエレノアにはあまり構わなくて良いですよ。他の困っている生徒を助けてあげてくださいね」

私の手を引いてレイモンドは自分に引き寄せる。
私が触れられるのは嫌だと言ったことを、また忘れている。

「兄上はアカデミーにいた経験がありませんよね。王宮の家庭教師は王族の視点でしか物事を教えません。ここでは王族に仕える臣下としての学びがあるのです。エレノア、困ったことがあったらいつでも僕を頼ってくださいね」

上品に微笑んで優雅に去っていくフィリップ王子は誰がどう見ても王族のオーラがある。

「今日は街で何かあるのですか? 特にお祭りの日でもありませんよね。もしかして、今日が審判の日だから最後に変わった自分をアピールしようとしていますか?それで、そんなチンピラのような格好をしているのでしょうか? レイモンドは元々王家の紋章がついた礼服を着ていなければ、チンピラのお兄さんだと勘違いされてもおかしくない方でしたよ」