私は自分で初動が大事だと言っていて、フィリップ王子の私の初対面の印象が最低だということに気がついた。
そのことに落ち込むということは、私はやはり彼に恋をしていたのだろう。

しかし、今は騎士の誓いをした唯一の君主として彼を見られるようになっている。
フィリップ王子を思うおかしな気持ちも薄れていってくれるに違いない。

「エレノア、私が間違っていました。お願いします、チャンスをください。私はあなたにどうしようもなく惹かれているのです。2年間だけでも私にあなたの時間を頂けませんか?別人に変わることを約束致します」

彼の黒髪から覗く海色の瞳は、私の好きなフィリップ王子のものに似ていた。
8歳も年上の王族であるレイモンドを侮辱したのだから、不敬だと怒り狂ってくれれば切り捨てられるものを猶予を懇願してくるとは思わなかった。

「フィリップ王子に王太子の地位を譲る気もないのですか? 私は自分の幸せより国民の幸せを考えてくれる君主が理想なのです。フィリップ王子は私の理想の君主だと思いました。レイモンドは自分のことばかりですね。先程、ダンテ様が愛する皇帝陛下と言ったのを覚えていますか? 彼は男色の気があると自白していたのです。どうして、そのルックスを武器に彼を誘惑しなかったのですか? 彼は帝国にとって敵国だった国の出身でありながら、外交を任されている優秀な人材です。こちらに取り込めればサム国にとって強い武器になりましたよ」

私はダンテ様をサム国に取り込みたい一心でプライドを捨てて彼を誘惑しようとした。
12歳の子供の私が彼を誘惑したところで、成功しないと分かっていたが特攻した。

それなのに挨拶をされないことに拗ねて、サム国の王太子であるレイモンドは何もしなかったのだ。