逃亡した帝国の公女は2人の王子に溺愛される。

アゼンタイン侯爵家に引き取られてしばらくは、余りに善良に見える侯爵夫妻が怖くていつも喧嘩腰に話していた。
彼らに好かれたいと願って、裏切られた時の自分を想像するだけでゾッとした。
ならば最初から憎まれるように振る舞えば、捨てられても傷つかないという私の決断だった。

「エレノア、君が誰であろうとどうでも良い。君は私の全てだ⋯⋯」
私を強く抱きしめてくるアゼンタイン侯爵は本当に親切で素敵な方だ。

茶髪に影を落としたような藍色の瞳。
彼は戸籍上で言う、私の養父、つまり現在の私の父親だ。

「そんなことを言って、隣のあなたの妻はどう思うのでしょう? 私を自分好みに育てて自分の女にしたいのですか?だったら、養子にするという選択は間違いだったのではありませんか?」

この男の目的はなんだろう、私を引き取って利用する気に違いない。
必死に隠していたけれど男を操作できる魅了の力の存在はバレていたのかもしれない。

たくさんの悪い可能性を考え続けて、相手に期待をしないようにした。
アゼンタイン侯爵が男性である以上、私が好かれたいと願えば魅了の力がかかってしまうというリスクがあり怖かった。
「私はあなたを本当に愛しているわ。お願いだから、信じて」

私は貴族にしては純粋すぎる侯爵夫人に抱きしめられた。
戸籍上、私は彼女の娘ということになっている。