「エレノア、次の騎士試験一緒に受けような。アカデミーも楽しみだな。俺、勉強はあまり得意じゃないからお前が助けろよ」
ハンスがいつもよりも強めに私の髪の毛をガシガシとしてくる。
少し痛くて思わず屈んでしまい、彼の表情は見えなかった。
12歳になり、私とハンスはアカデミーに入学した。
入学式に私たちがお言葉を承るのは最高学年の主席ではなくフィリップ王子だった。
当然のことだろう、王族はいつだって中心にいなければならない存在だ。
壇上に上がった美しいプラチナブロンドの王子に釘付けになりそうになるのを私はハンスに話しかけることで防いだ。
「フィリップ王子は取り込んだ方が良いわ。あなたの立場なら大丈夫よ」
私は自分がささやいた言葉と甘い声に寒気がした。
どうして私は一途に自分を想ってくれる相手さえ、目的のために利用しようとするようなことをしてしまうのだろう。
無意識に使ってしまう砂糖菓子のような甘い声が大嫌いだ。
ハンスの好意を利用しようとしているのだとしたら、私は最低だ。
「エレノア、具合が悪いのか? 会場を出ようか?」
ハンスが私に小声で言ってくる言葉に私は静かに頷いた。
会場に響くフィリップ王子の声が耳に残った。
ハンスがいつもよりも強めに私の髪の毛をガシガシとしてくる。
少し痛くて思わず屈んでしまい、彼の表情は見えなかった。
12歳になり、私とハンスはアカデミーに入学した。
入学式に私たちがお言葉を承るのは最高学年の主席ではなくフィリップ王子だった。
当然のことだろう、王族はいつだって中心にいなければならない存在だ。
壇上に上がった美しいプラチナブロンドの王子に釘付けになりそうになるのを私はハンスに話しかけることで防いだ。
「フィリップ王子は取り込んだ方が良いわ。あなたの立場なら大丈夫よ」
私は自分がささやいた言葉と甘い声に寒気がした。
どうして私は一途に自分を想ってくれる相手さえ、目的のために利用しようとするようなことをしてしまうのだろう。
無意識に使ってしまう砂糖菓子のような甘い声が大嫌いだ。
ハンスの好意を利用しようとしているのだとしたら、私は最低だ。
「エレノア、具合が悪いのか? 会場を出ようか?」
ハンスが私に小声で言ってくる言葉に私は静かに頷いた。
会場に響くフィリップ王子の声が耳に残った。



