「はぁ、はぁ、まだまだあ⋯⋯」
私は今、ハンスと剣術の稽古をしている。
彼はとても強い、でも武器というのは剣以外にも存在する。
私は彼に対して微笑んだ。
彼は私の突然の微笑みに驚いて、一瞬隙が生まれる。
私は彼の剣を思いっきり叩き、振り落とした。
「なんか、今のずるくないですか? エレノア侯爵令嬢」
ハンスが呆然しながら尋ねてくる。
確かに彼が私の惚れていると知った上で繰り出した技だ。
「不測の事態に対処してこその剣術。ハンスは剣術の演舞でもしていたら。あなたの剣術は確かに美しいわ」
私が言うとハンスは膨れっ面をした。
こんな表情を次期公爵になる彼がしたら、帝国では問題になる。
帝国の貴族は表情を管理し常に無表情で感情を読まれないことを大事にする。
それに比べてサム国の貴族は爵位こそあり権威は持っているけれど平民と変わらない自由を持っているように私には見えた。
「私、サム国が好き。守りたいわ。協力してくれるわよね、ハンス」
自分が発した甘い声色に思わずぞっとした。
4歳までにカルマン公爵邸で身につけさせられた、男を誑かすような声色を私は自然に使ってしまっている。
目的の為なら何でもしそうな自分が卑しく気持ち悪く感じて吐き気がした。
私は今、ハンスと剣術の稽古をしている。
彼はとても強い、でも武器というのは剣以外にも存在する。
私は彼に対して微笑んだ。
彼は私の突然の微笑みに驚いて、一瞬隙が生まれる。
私は彼の剣を思いっきり叩き、振り落とした。
「なんか、今のずるくないですか? エレノア侯爵令嬢」
ハンスが呆然しながら尋ねてくる。
確かに彼が私の惚れていると知った上で繰り出した技だ。
「不測の事態に対処してこその剣術。ハンスは剣術の演舞でもしていたら。あなたの剣術は確かに美しいわ」
私が言うとハンスは膨れっ面をした。
こんな表情を次期公爵になる彼がしたら、帝国では問題になる。
帝国の貴族は表情を管理し常に無表情で感情を読まれないことを大事にする。
それに比べてサム国の貴族は爵位こそあり権威は持っているけれど平民と変わらない自由を持っているように私には見えた。
「私、サム国が好き。守りたいわ。協力してくれるわよね、ハンス」
自分が発した甘い声色に思わずぞっとした。
4歳までにカルマン公爵邸で身につけさせられた、男を誑かすような声色を私は自然に使ってしまっている。
目的の為なら何でもしそうな自分が卑しく気持ち悪く感じて吐き気がした。



