私はビアンカ様には元の優しいお姉さまに戻って欲しかった。
リード公爵は特に私を差別しなかったが、リード公爵夫人は私のような野良猫と自分の子が仲良くするのをよく思っていなかった。
それを察して、公爵夫人の軽蔑の視線から私を守り実の妹のように接してくれたのがビアンカ様だ。

「え、ライバルを潰しても順番は回ってこないってどういうこと?俺とエレノアが両思いになることはないってこと?王太子殿下と姉上が両思いは考えられない気がする。姉上は夢見がちだけれど、王太子殿下は人を愛するような方ではないよな。エレノアはそんな奴じゃないよな?」

ハンスの言いたいことはわかった。
父親から虐待されてきたから、男に対して冷めた目で見てしまうのだろうか。

そんな私でもフィリップ王子に会った時は関わるのが怖いくらい恋したような気持ちにさせられた。

「ハンス、大事な姉君ビアンカ様に今は集中しましょう。彼女がライバルの貴族令嬢を次々と消そうとしたらどうするの?」
「そうだな。姉上が可愛がっていたエレノアを消すことを考える程、追い詰められているんだもんな」

ハンスに言われて私は改めてレイモンド王太子殿下を怖いと思った。
女遊びに費やす労力を国を守ることに使ってくれたらどれだけ良かったか。