「俺の恋のライバルは帝国の絶世の美女とサム国ってわけね。俺がどうしてエレノアを好きになったのかという話をさせてもらうよ。5歳の時アゼンタイン侯爵邸で同じ年の子がいるといわれて紹介されたエレノアが、見たこともないくらいの絶望顔をしていたんだ。俺はなんとかエレノアを笑わせたくて過ごしていたら、いつの間にかお前のことばかり考えるようになっていて好きになっていた」
突然、自分が私を好きになった理由について語りだすハンスに思わず笑ってしまう。
こんなに暖かい彼と一緒にいたら、私も彼に恋をし出しそうで怖くなる。
「ハンス、あなたは恋のライバルを潰せば自分が愛されると思っているわね。おそらく、その考え方はビアンカ様も持っている考え方だわ。だから王太子殿下の婚約者に選ばれた私を消そうとしたの。でも、実際はそういうものではないわ。王太子殿下の女はビアンカ様だけではないし、彼は女たちに自分は彼の特別だと思わせるのが上手いだけで彼にとって特別な相手は存在しないの。だからライバルを潰しても自分だけが愛される順番は回ってこないわ。私はビアンカ様とは友好的な関係でいたいし、彼女には恋で自分を見失ってほしくないの。恋の相手が素敵な方なら別だけど、相手は色狂いの王太子殿下よ。あなたはビアンカ様と同じ家に暮らして信頼されている弟よ。今、王太子殿下の批判をしても彼に恋している彼女の耳には届かないと思う。王太子殿下の批判をすることなく、客観的に現状を把握させるように努めてくれる?」



