「はっきり言って、エレノアが初恋のエレナ皇后に会うのが嫌です」
彼が子供のようなことを言いながら、私の頬を撫でてくる。

「私の初恋はレイモンドあなたです。エレナ皇后は私の憧れでヒーローだったと気が付きました。婚約者指名の後、庭園であなたと話した時、私は自分にはない強い自信を持つあなたに惹かれました」

私は彼と最初にあった日に彼の海色の瞳に映った自分が、今まで見たどの自分よりも可愛く見えたことを思い出した。
私はあの時にすでに恋に落ちて彼にときめいていたのだ。

「それは本当ですか? でも、エレノアは冷たく婚約破棄をするように言ってきましたよね」
明らかに驚きを隠せいないレイモンドが私に矢継ぎ早に問いかけてくる。
帝国の首都に行くまでに、優雅な話し方と表情管理を叩き込まなければいけなそうだ。
彼にも帝国の首都に来訪する際の顔をつくってもらわなければならない。

「カルマン公爵家には『周囲はみんな詐欺師、人は駒だと思え』と言う家訓があります。明らかに詐欺師の顔で、私を利用しようとしているあなたを見たら、とてもじゃないけれど自分の気持ちを認められませんでした。詐欺を働いても詐欺られるな、人を駒にすることがあっても駒にされるなという教えが私には染み付いていたからです」