レイモンドの部屋に連れて行かれベッドに降ろされる。

突然、経験したことのない大人の口づけをされて驚きのあまり硬直した。
私は先程軽くした口づけでさえ本当は結婚式の日までとっておこうと思っていたのだ。
でも、魅了の力が消えた喜びのあまり唇に口づけをしてしまった。

「待ってください、レイモンド。そのような口づけは結婚式の夜までしてはいけないことになっています」
私は必死に彼の胸を押して抵抗する。

「心が通じ合ったので今からエレノアaを抱こうと思っていのですが、そちらもダメでしょうか?」
彼は一体何を言っているのだろうか、婚前交渉など私がするわけがない。

「絶対ダメに決まってますよね。どうして良いなんて思っているのですか? 離婚の理由の1位は価値観の不一致と言われています。私たち結婚する前から価値観が合わなすぎですね。戸籍にキズがつく前に結婚をやめましょうか」
私が怒りに耐えているのが分かったのか、彼は大人しく話を聞いている。

よく考えれば、彼は私の8歳も年上の体格の良い大人の男だ。
なんだか、しっかりと話を聞けるところがとても可愛いと思ってしまった。